音楽の肖像
俊太郎, 谷川
小学館
2020-10-30


この本で堀内誠一の絵を見たとき、デュフィーかマチスの絵かと思った。グラフィックデザイナーであり、イラストレーターの堀内誠一の作品を意識したことがなかった。経歴を見ると、『anan』創刊時のアートディレクターも務めている。去年、京都伊勢丹のミュージアムで「anan50周年展」をやっていたが、そこで見た表紙もそうだ。
堀内氏が亡くなって、34年が経つ。この本は堀内氏が描いた音楽家の肖像画やエッセイを集め、それに友人の谷川俊太郎が詩を書いたものだ。
こんな詩がある。
「亡き王女のためのパヴァーヌ」を聞いていると
ぼくは一生ひとりで暮らす方がよかったんじゃないかと思う
そば粉とパンケーキを焼いてメープルシロップをかけて
ひとりで食べる自分の姿が目に浮かぶ
モーリス・ラベルの章、「ひとりで」より
バッハの音楽を「日々のパン」に例えた作曲がいた。当たり前のように日々の生活に溶け込んでいるので、今さら褒めるのは、余計な、気まずい感じがすると。
この本はクラシック音楽を愛した堀内誠一と谷川俊太郎の、あの世との交換日記みたいなものです。
読まなくても見ているだけで、とても心地よい時間が流れます。