稲盛和夫の実学―経営と会計
稲盛 和夫
日本経済新聞社
2000-11-07


「売上を最大に、経費を最小に」。稲盛氏の経営の原則はこの言葉に集約され、実体のない偽りを嫌う。借金経営や会計上のごまかしを嫌うことも稲盛氏には実体のない偽りと映るからだろう。この本を会計書として読むと理解しがたい原則がいくつも出てくる。時間当たり採算制度や売価還元原価法など。しかし、古典的な経営書として読むと、価格決定に際して費用積み上げ型でなく、市場の変化で決めることや固定費の増加こそ経営で最も注意すべきことなど当たり前のことであるが忘れがちなことを思い起こさせてくれる。稲盛氏の考え方が進みすぎているのか、世間が遅れているのかはわからないが、今、重要視されているキャッシュフロー計算書を批判して、それよりキャッシュと利益を近づけていくのが、稲盛会計学なのだそうだ。しかし、セラミックメーカーからKDDIというIT企業まで抱えるようになった今も、実体のない偽りを嫌う会計学なのか聞きたいところである。