書肆じんたろ

読書は著者との対話、知りたいことのseek & find、ひとときの別世界。 真理には到達できないのに人々はそれを求め続ける。世界が何であるかの認識に近づくだけなのに。正しいことより善いことのほうがいいときもある。大切なのは知への愛なのか、痴への愛なのか。

2007年03月

企業変革力
ジョン・P. コッター
日経BP
2002-04-13


コッターの近著『企業変革ノート』と読む順序が逆になった。先に書かれたこの本もいちいち頷く所が多い。最も納得したのが、第2ステップの変革チームの作り方。キーパーソンを巻き込まないと変革のパワーにならないが、チームに入れてはいけない2種類の人がいるという。そのうちの一種類はエゴが強すぎる人である。経営トップは誰しもエゴが強いものだが、それを自覚せずチームから信頼が得られないような人は変革チームには害になるだけとのことだ。もう一種類はコッターが「蛇」と呼ぶ種類の人だ。チームのあるひとにはAといい、、違う人にはBといってチームを混乱させる。チームに最も必要なのはある方向へベクトルをそろえることであり、何より信頼しあえることである。そういう気がないとか、混乱させようとすることしかできない人はチームにとって百害あって一利なしということだ。

第1ステップで危機感を高め、改革のベクトルを同じ方向性にしていないと改革が挫折することが多いのも同感だ。第6ステップの短期的結果を軽視しないというのも教訓的だ。第7ステップの変革の停滞を打破することも大事だ。停滞の理由が、戦略に合わない昔ながらの組織構造や報酬システムということもある。最後の第8ステップが変革を企業文化に根付かせるということもよくわかる。組織文化の変革は最後の課題なのだ。企業文化が変革を邪魔するのでできないとか、文化を先に変えないと変革はできないというのは間違いである。変革を成功させ、停滞を打破し、さらに進めるなかでしか企業文化を変えることはできない。コッターは企業人ではないのに実務の理解にリアリティがある。おそらくコンサルタントとして、また調査で企業の事例と企業人以上に取り組んでいるせいだろう。

隠れた人材価値 (Harvard Business School Press)
チャールズ オライリー
翔泳社
2002-03-20


組織は戦略に従うというように、まず戦略があり、組織を適合させ、人材を鍛える経営だけが成功するといわれている。しかしこの本に取り上げられた企業は確かにそれとは違うようだ。サウスウエスト航空のように、まず社員が第一という企業の強固な価値観があり、従業員重視の経営をしており、経営陣が管理者でなくリーダーとなり高業績を上げているいくつかの会社が紹介されている。シスコシステム、SASも業界は違うが、似たような成功する要因があるようだ。一方、ピープル・エクスプレスやリーバイ・ストラウスも同じような価値観、従業員重視、企業文化の重視を標榜している。しかし実態は官僚的運営や従業員無視などが見られ、事業の成功に結び付かないらしい。だが、サウスウエスト航空などはそれだけでなく、マネジメントやオペレーションも優れているように思えるし、戦略もはっきりしている。顧客重視で乗継ぎ路線はなく、直行便のみの運行。フリードリンクはあるが、機内食を一切出さない。機種はB737だけでメンテを統一、空港で15分以内の折り返し飛行などコスト意識が高い。人材採用も企業理念に合う性格のものだけを採用する。給与は多少他社より安いが超過勤務で補う。むやみに路線拡大しない戦略などビジネスモデルとしては考え抜かれている。従業員重視というのは価値観の同質化した従業員に対して、満足度を上げる家庭的な処遇をしたほうがマネジメントしやすいという見方もできる。けれど従業員の満足が顧客満足につながるというのはサービス産業では大事なことかもしれない。笑顔の裏に会社不信があったりすると、そのサービスが本物でないことは客にもわかるだろう。




ジョン・コッターの企業変革ノート
ジョン・P・コッター
日経BP
2003-12-11


ジョン・コッターのエンパメント・リーダーシップを企業変革レベルにまで応用するとこうなるのだろう。
(1)危機意識を高める、
(2)変革推進チームをつくる、
(3)適切なビジョンをつくる、
(4)変革のビジョンを周知徹底する、
(5)自発的な行動を促す、
(6)短期的な成果を生む、
(7)さらに変革を進める、
(8)変革を根付かせる
という8つの変革ステップについて、それぞれの成功事例が紹介されている。変革ステップに貫かれているのは「見て、感じて、変化させる」という方法だ。コッターは感動が人を動かすという。人間の大脳が発達したのは中脳や小脳より遅い。人の行動を変えるのは知識やデータだけでは不十分で、感動を呼び起こす言葉や映像などが必要とのこと。ソニーの元CEOの出井氏も自著でコッターの8つのステップ理論を紹介していた。出井時代のソニーは前半がエンターテイメント企業としての変革の成功、後半は業績低迷で失敗したと思われている。実際に出井氏の本でもそのあたりの要因(古い体質など)は解説されている。しかし、変革の停滞が問題ではなく、短期的な業績を株主や経済マスコミがソニーに求め過ぎたのかもしれない。8つのステップはこの順序どおり進むかどうかわからないことも書かれている。ステップのどこに落とし穴があるのかの判断もケースにより難しい。



1920年代に経営環境の変化を受けてデュポンが事業部制を採用する研究を行ったチャンドラーの『組織は戦略に従う』。ミシガン大学のノール・ティシーが提唱したぬるま湯を熱していくと脱出できずにゆであがってしまう「ゆでガエル」理論。組織でのサバイバル不安感を高め、学習不安感を下げることが変革につながるというシャインのSA>LA理論。小さなルーチンワークの計画が大きな計画を駆逐するというマクラウドの「計画のグレシャム法則」。この本はこういう組織論に関する貴重な理論を織り混ぜながらビジネスパーソンが読みやすいように書かれている。しかし金井教授はちょっと他人の引用が多すぎるのが気になる。これは権威に弱いのか、持論に自信がないのか、それとも研究者に特有の書き方なのか。


組織設計のマネジメント―競争優位の組織づくり
ジェイ・R. ガルブレイス
生産性出版
2002-09


組織設計をすることは、戦略、構造、プロセス、リウォード、人材の5つのポリシーを組み立て、それぞれの整合性を設計することである。これをジェイ・ガルブレイスはスター型モデルと名付けている。この本は、最近流行の組織モデルであるプロセス組織、分散型組織、ヴァーチャル組織、フロント/バック組織などについても紹介されている。環境の変化にいかに適応する柔軟な組織を作るかに力点が置かれているように思う。最もためになったのは組織の横断的調整のプロセスである。現在では機能別組織、事業部別組織などの純粋なモデルとしての企業や団体は存在しないだろうと思えるが、どんな組織でも機能やユニットで区分するとその間に壁ができる。それは各部門の業務プロセスや人的構成、組織文化などの要因が大きい。しかし、普段からその壁を意識してどのように調整を行うかで、組織のパフォーマンスは変わってくるだろう。必ずしもマトリスク組織などの指示系統や権限があいまいになる形をとらなくてもよいような気がする。




このページのトップヘ