書肆じんたろ

読書は著者との対話、知りたいことのseek & find、ひとときの別世界。 真理には到達できないのに人々はそれを求め続ける。世界が何であるかの認識に近づくだけなのに。正しいことより善いことのほうがいいときもある。大切なのは知への愛なのか、痴への愛なのか。

2008年03月



強い現場をつくる七つ道具として、業務連鎖、人、場、組織、業務評価、情報技術、基本哲学が上げられている。現場でPDCAサイクルが意識的に回っており、問題発見から問題解決まで行われている組織ほど強いものはないだろう。倒産時の吉野屋がそんな感じだったんじゃないだろうか。

トヨタでは、PDCAに+A(Achievement)効果の検証でPDCAAサイクルなのだそうだ。Actionの効果のまで追求する現場力。さすがトヨタ。




マーケティング調査をアンケートなど定量的な方法でなく、デプス・インタビューなど消費者の深層に迫る定性的な方法を使うときに役立つ本。ブランドや企業、製品のイメージを写真から選んで表現してもらうコラージュ法や何かに例えるアナロジー法などは参考になる。



ブランドとは何か? もやもやした気持ちがこれを読んで一気に晴れた。企業が考えるブランドアイデンティティと消費者がもつブランド・イメージ。これをつなぐブランド・コミュニケーション。企業はブランドアイデンティティをどのように整理し、消費者にどのように伝えるか。消費者のブランドイメージは表層から深層まで、必ずしも企業が思い描くイメージでは伝わらない。それをブランドコミュニケーションでどう形成するか。

ブランドとは焼き印、ロイヤリティを高めるものという考え方ではなく、企業と消費者の関係性で捉えると、ブランドがどのような意味を持ち、企業がどのように働きかければよいかの課題が見えてくると思う。

アセロラドリンク、サントリー烏龍茶、ミツカン食酢の事例はとても参考になる。



前作『さおだけ屋はなぜ儲かるのか』はアカウンティングの入門書として読むととても面白かったので、この本を買った。けれどかなり期待はずれだった。この本はアカウンティングというより見かけの数字や現象に騙されるな、というテーマの本である。簡単すぎて得るところはほとんどない。下巻までいっしょに買ってしまったのが悔やまれる。新書も一度売れると、その作家はブランドとして安易な売り方の対象になってしまうのか。この本の作り方じゃブランド損失だと思うが。



1969年に初版が出版された大久保利通研究の古典的な本。

明治のジャーナリスト池辺三山は大久保利通のことを「堅忍不抜、一度思い極めたことは非常な執着力をもってそいつを実行する」と評したらしい。

西郷隆盛は自分の「築造と破壊の才」に対して、大久保の「造作の才」を評価した。

大久保が欧州視察の際にドイツのビスマルクと会い、弱小のプロシアが大ドイツ帝国になったことに感銘した。そのドイツにならって富国強兵、殖産興業に邁進したのだとうという解釈。



吉田松陰のように学問を極めたわけでもなく、坂本龍馬のように壮大な発想があったわけでもない大久保利通にとって、ヨーロッパ見聞は理想の未来像を描く素材となったのだろう。西郷隆盛との差はこの欧州視察に行った者と行かなかった者の差かもしれない。

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