書肆じんたろ

読書は著者との対話、知りたいことのseek & find、ひとときの別世界。 真理には到達できないのに人々はそれを求め続ける。世界が何であるかの認識に近づくだけなのに。正しいことより善いことのほうがいいときもある。大切なのは知への愛なのか、痴への愛なのか。

2008年07月



経営者や管理職の視点でメンタルヘルスを考える本。

メンタルヘルスの本といえば、精神科医やカウンセラーが診断と対応について書いた心理学書が多く、こういうコンセプトの本は少ないように思う。

メンタル不調による休職や生産性の低下、それが原因で引き起こされる自殺や労働災害によって、企業は大きなリスクと向き合っている。著者は現代を「ハイパー・チェンジ・エイジ」ととらえている。つまり、リストラや成果主義などにより職場は大変革の時代となっているのだ。経営者や管理職もこの変革が従業員にどのようなメンタルな影響を及ぼし、どのようにリスクを減らすかを考えないといけない。

ラインケア、セルフケア、職場のカウンセリングに加えて、会社と独立した専門家へのアクセスという4つのメンタルヘルスケアが必要であるということはよく理解できる。ラインケアも個人的な努力でなく組織的な対策がなければ問題は解決しないのだろう。



コンパクトだけれども密度の濃い本。



クリシンや定量分析の授業がライブコンサートのように蘇ってくる。

ここまで授業のケースを出していいんだろうかと思わず心配してしまう。けれど、ライブコンサートとしてのクラスの臨場感やそこでの発見はまた別の楽しみなのだろう。それとも授業ではもう新しいケースに差し替えられているのだろうか。



Quick and Dirty

Apple to Apple



などの説明がさらりと1、2行で書かれているのも驚きだ。

クリシンや定量分析の授業を受けた者にとっては、そのことばの奥深さが本の端々に凝縮されている感じがする。





「どこまでがよい解釈でどこからが論理の飛躍になるのか」

「理解と共感は違う」



これらは日頃痛感する。

定量分析の授業の後、仕事で散布図や近似曲線もよく使うようになった。散布図で相関データを楕円で囲んでグルーピングすることや近似直線と回帰式を出した後でR2をルートで開いて相関係数として表示したり、わかりやすくするための「ひと手間」も心掛けている。



この本の各章のケースもおもしろい。ケースのわりには登場人物の細かな感情なども書き込まれていて、ビジネス書なのにちょっと文学的でぐっとくる。



Excelの使い方がよくわからず悩むことがある。

もし機会があれば、定量分析の実践編としてグロービス編集のダイヤモンド社のテキストを定量分析とExcelの使い方がわかる本として書き換えてほしい。




この著者をよく雑誌で見かける。

興味があったのは著者本人の生活ももちろんだが、ワークライフバランス王子である夫はどんな人なのか。

この本によると夫・ヒロシ君は貯金もロクにせずに著者にプロポーズした。

MBAのためにアメリカに留学したときには奥さんである著者に支援してもらったらしい。残業の毎日だったが、著者に子育てと仕事の両立で泣かれてから子育てなどにも関わるようになった。

著者の履歴は、日本女子大在学中に1年間アメリカ留学し、資生堂に入社。

2年目に社内ビジネスプランコンテストで優勝。そのプランが育児休業者の支援プログラム。そのアイデアをもとに起業して成功した。その上、容姿端麗。

とても恵まれた家庭環境とキャリアのような気がするが、この本を読んでみると都会で必死に暮らすひとりの女性の姿がわかる。

早く帰るために周りに感謝のことばを毎日言う工夫や夫と子どもとの散歩とジョギングを組み合わせる工夫。毎日の小さな努力がワークライフバランスを会社や世間に広める道なのだろう。

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