書肆じんたろ

読書は著者との対話、知りたいことのseek & find、ひとときの別世界。 真理には到達できないのに人々はそれを求め続ける。世界が何であるかの認識に近づくだけなのに。正しいことより善いことのほうがいいときもある。大切なのは知への愛なのか、痴への愛なのか。

2008年08月



大金持ちもここまで来ると庶民とは感覚が違う。

ゲイツもバフェットも金持ちはもっと税金を支払うべきで、アメリカの税制は金持ち優遇過ぎると言っている。大金持ちは貧乏人に金を還元すべきだとも言う。

ゲイツが作った慈善団体にバフェットは膨大な額の寄付をしているらしい。

この企画はバフェットの母校のネブラスカ大学の学生が二人に質問して答えるものだが、大金持ちになる方法を知りたい人には不向きな本。

金を儲けすぎてもてあましている人物は何を考えているのかを知るにはよい本だが。

この本には企画を録画した英語字幕付きのDVDが付いている。二人の姿と声に触れるにはよい本。金持ちマニア向けかも。

中高一貫校 (ちくま新書)
日能研進学情報室
筑摩書房
2008-05


2001年に『私立中高一貫校しかない!』を書いた著者が7年後に書いた本。今回、著者の名前は表に出ていないが、実際は井上修氏が書いたそうだ。7年前の予測通り「ゆとり教育」による授業時間数減少が、「超」教育階層社会の到来を生み、私立の中高一貫校ブームに拍車がかかった。しかし、当時と違うのは公教育が学習指導要領の改訂と併行して中高一貫校を設置し始めたことである。東京ではすでに8校ある。千葉、埼玉、京都などにも設置されている。昔のような進学校にならないという枠もはずされている。

優秀な中高一貫校も昔ながらの職人方教員で教育力を支えているところからシラバスの作成、外国語教育の重視、海外研修、理科教育に力を入れているところ、図書館が大学並みのところと様々になっている。

中高一貫校には大学附属系が多いが、宗教(キリスト教、仏教)系、実業系に加えて、ニューウェーブと呼ばれる強い教学理念の元に新しく設置するところもある。渋谷教育学園幕張などが典型だろう。

よい中高一貫校の見分け方は、説明会や学園祭などの行事で知ることが一番らしい。経営側と教職員が円滑にコミュニケーションとれていないところは入試や学校運営でも不安があるという。

その他、各地の動向(例えば、近畿圏での有力大学による囲い込みの進行)なども解説されていて面白い。



この本は2001年に出版されたものだが、今の中高一貫校ブームを先取りしている。

2002年から始まる学習指導要領での「ゆとり教育」による授業時間数減少が、「超」教育階層社会の到来を生み、私立の中高一貫校の人気に拍車をかけるという予測は見事に当たった。この頃の私立受験率は東京では20%に達していたが、首都圏全体では13.7%だった。今は東京で30%に達し、首都圏全体では20%を越えている。

教育コストは私立中高一貫から国立大学に進学できるなら、公立の中高から私立大学に行くのとそんなに変わらない。東大、京大に行かせるのなら中高から私立に行かせた方が早道ということ。

この頃、公立の中高一貫校について、まだ不透明だったが、7年間で進学校としての公立中高一貫校が設置されている。当時とは事情が少し変わっているように思うが、ゆとり教育の政策が私学だけでなく公立の中高一貫も促進したということだろう。


成功のコンセプト (幻冬舎文庫)
三木谷 浩史
幻冬舎
2009-12-01


カンブリア宮殿に三木谷社長が出演しているのを見てからこの人にはとても興味があった。『成功のコンセプト』もおもしろいので60分くらいで読んでしまったが、また読みたい本である。



<コンセプト1:常に改善、常に前進>

人間の力には潜在能力、能力、実力の3種類あり、潜在能力を能力まで高められない人、能力があっても周囲の状況や自分のコンディションで実力を発揮できない人もいる。潜在能力をいかに実力にまで結実させるか、そのために楽天では「常に改善、常に前進」することを最も大事にしているという。

<コンセプト2:プロフェッショナリズム>

プロフェッショナルとはどれだけ自分の仕事に心血を注いでいるかできまり、なにより仕事を楽しみにしていることだという。

<コンセプト3:仮説→実行→検証→仕組化>

アイデアは右脳で、フレームワークは左脳で。右脳も大事だが、左脳での蓄積も大事。しかしビジネスにおけるフレームワークは自分で見つけないといけない。成功のためには右脳と左脳を使って、仮説→実行→検証→仕組化が必要。

そのほか<コンセプト4:顧客満足の最大化><コンセプト5:スピード、スピード、スピード>で5つの成功のコンセプトを三木谷氏が大事にしている。

三木谷氏はハーバードビジネススクール(HBS)のMBAだが、この本には難しいことが一切書かれていない。HBSでは、いかに大きな企業に属しているかとかではなく、小さい事業でも自分の才覚で新しいビジネスを起こす人が称賛されたらしい。GAPやベネトンの国際戦略の授業で三木谷氏は一人だけいかに地域ごとの多様性が重要かを主張していたという。この人が事業で学んだことをぜひ参考にしたい。


多文化世界 (岩波新書)
青木 保
岩波書店
2003-06-21


著名な文化人類学者である青木氏の主張は「文化を政治化するな」ということだそうだ。前著『異文化理解』を書いた後に「9・11」が起きて、この本を書いたらしい。

ジョゼフ・ナイという国際政治学者の論文がよく引用として出てくる。他国への影響力の行使には「ハードパワー」と「ソフト・パワー」があり、ハード・パワーとは経済力、軍事力、技術力で支配すること、ソフトパワーとは文化の魅力によって他国に影響力を与えること。このジョセフ・ナイの主張のソフト・パワーにこそ注目すべきというのが青木氏の言いたいことのようだ。ロシアを例に取れば、軍事力が言語帝国主義でなく、チャイコフスキーの音楽やドストエフスキーの文学により尊敬を得る国になることこそが文化の多様性を認め、支配力を得ることなのだそうだ。しかし、スターリン時代にはエイゼンシュテインなど多くの創作者が政治的に利用されたことを考えると文化の中立性というのはないのではないかと思う。

それでも文化人類学で一時「文化的相対主義」が流行り、それがイスラム原理主義も許容することになったのでその反省もあるようだ。つまり相対主義というのは、絶対的な者がいくつも存在するという解釈になったので、それを修正したいのだ。その反省から、多文化を認め、相互に理解しあうことが共存の道という当たり前の結論になるようだ。文化人類学者の主張はしばしば無力だと思う。

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