書肆じんたろ

読書は著者との対話、知りたいことのseek & find、ひとときの別世界。 真理には到達できないのに人々はそれを求め続ける。世界が何であるかの認識に近づくだけなのに。正しいことより善いことのほうがいいときもある。大切なのは知への愛なのか、痴への愛なのか。

2008年11月



「アクションラーニングとは簡単に言えば、実務を通じたリーダー育成、チーム・ビルディング、組織開発を効果的に行う問題解決手法である。小グループが現実の問題を解決するなかで行動し、個人、グループ、組織が学習していくプロセスがアクションラーニングといえる」というのがマーコードの説明。これでは、世間によくある能力開発ワークショップと同じではないかとも思えるが、アクションラーニングは6つの必要不可欠な構成要素でなりたっているらしい。①問題(プロジェクト、挑戦、機会、課題)、②グループ、③質問とリフレクションを重視するプロセス、④問題解決のための行動を起こす、⑤学習へのコミットメント、⑥ALコーチ。このなかでも③の質問とリフレクションと⑥ALコーチの要素が重要なようだ。

ALコーチとファシリテーターは同じ役割のようだが、マーコードの定義によると違いがあるという。大きな違いはファシリテーターがグループプロセスに焦点を当てるのに対してALコーチは学習とメンバーの能力向上に焦点を当てることだろうか。ALコーチのほかにもスポンサー(アドバイザーか)、チャンピオン(経営トップ)の役割も重要なようだ。

問題の設定もシングル(グループで単一で設定)とマルチプル(メンバーがそれぞれで設定)がある。これはALコーチがグループをどのような方向に導くかで成果が大きく左右されるんじゃないかと思える。ALコーチのスキルが試されそうだ。でもグループのなかでALコーチの持ち回りもありだという。その一方でALコーチは2日間の集中トレーニングが有効などとも書かれていて本を読むだけでは今ひとつどういう手法なのかよくわからない。

でも本の中にはコリンズのビジョナリー共有やセンゲの学習する組織、野中郁次郎のナレッジマネジメント、ジョン・コッターの組織改革プロセスなどの理論のええとこどりの引用も見られ、すごいことをやるようにも思える。

要するに大事なことはマーコードが顧問を務めるGIALジャパンに頼めということなのだろうか。

新選組 (岩波新書)
松浦 玲
岩波書店
2003-09-20


新選組は明治維新をつぶす単なる「ならず者集団」だったのか? 最初は坂本龍馬や西郷隆盛などと同じような尊皇攘夷に近い思想をもっていたのではなかったのか? こういう仮説の下に、これまであまり重視されてこなかった近藤勇の全手紙を再構成して、新選組が思想集団からラストサムライ集団に変貌していく過程を示している。



新選組の歴史は長いようで短い。近藤勇ら浪士組が江戸を出発たって、土方歳三戦死するまでたった6年間しかない。



文久3年(1863年)に壬生浪士組と名乗っていた頃はまだ尽忠報国(じんちゅうほうこく)=尊皇攘夷(そんのうじょうい)を標榜して日本国のために命を捧げるということを目標にしていた。映画『壬生浪士組』で中井貴一演じる吉村貫太郎と佐藤浩一演じる斎藤一が出会う頃だ。しかし、開国の動きが強まり、池田屋事件、禁門の変で長州の尊皇攘夷過激派を斬り、開国派の伊東甲子太郎らが新選組に入隊した頃から新選組が思想集団でなくなったらしい。



慶応3年(1867年)に幕臣取り立てが決まる。攘夷するまで幕臣取り立ては受け入れられぬと近藤勇が断っていたのに、攘夷もしないまま受け入れたのは新選組の財政事情が影響したのだろう。これで新選組は裕福になる。近藤勇らと考えが合わない伊東甲子太郎らが離脱し、新選組に刺殺される。後は幕臣として生きる道しかない。鳥羽・伏見の戦いから近藤勇の斬首、五稜郭での土方歳三らの抵抗。



薩長らの志士は、尊皇攘夷(そんのうじょうい)を掲げながら、攘夷が無理と見ると尊皇だけを掲げて公武合体から討幕への道を選択した。しかし、ラストサムライたる新選組(近藤ら天然理心流が中心となった部隊)は最期まで尽忠報国(じんちゅうほうこく)を尊皇と攘夷のように分離することができなかった。映画『壬生浪士組』で吉村貫太郎(中井貴一)が「一度故郷を裏切った者がまた幕府を裏切れない」と新政府軍に挑んでいったのもリアルな話かもしれない。司馬遼太郎は、「新選組がいなかったら明治維新はあと1年早く成立していただろう」と言ったらしいが、歴史は改革と抵抗、作用と反作用で進むものなのだ。新選組は、研究者にはあまり好まれず、大衆に愛される存在だが、歴史を両側から見る上で興味深い存在だ。




ブランドという実体のない抽象物を資産として見る。この考え方はその昔斬新なアイデアだったのだろう。いまやマーケティングを考える上でブランドの存在は無視できない。アーカーによるとブランド・アクイティは、株価×株式数の価値から有形資産や特許資産などをマイナスしていって求められる。

アーカーはブランド・エクイティの形成について、ブランド・ロイヤルティ、ブランド認知、知覚品質、ブランド連想―ポジショニングの決定、ブランド連想の測定、連想の選択、創造、維持、名前、シンボル、スローガンの順で説明する。そして一旦強力なブランドが形成されると、ブランド拡張も可能になる。しかし、成功するケースと失敗するケースがある。このあたりは『ブランド・ストレッチ』のほうが事例が新しいし詳しい。また、ブランドを再活性する事例も紹介されている。

30年以上前に発表された本だがいまでも通用する部分が多い。




とくに新しいことが書かれているわけではないが、ブランド研究について大事なことはすべて書かれている。最低読むべき本もすべて上げられている。『マーケティング22の法則』というマーケティングの基礎本からブランド研究の権威デビッド・アーカーの『ブランドエクイティ戦略』や『ブランド優位の戦略』、ポストモダンマーケティングのジェラルド・ザルトマンの『心脳マーケティング』まで。

新書版なので持ち運びに便利なのもよい。ノート代わりに使える。



ブランディング活動をアウターとインナーという視点から捉えて、とくにインナーブランディングについて書いた本。ページ数は少ないが、こういう本はあまり見かけないので実際の実務には役立ちそう。

ブランドを「想い出の小箱」=「価値への期待」と捉え、ブランディングについては消費者、株主などへのアウターブランディングと従業員への「インナーブランディング」として捉える。

インナーブランディングでは、「価値への期待」のために自分は何ができるだろうかを考えるところまでが必要。

インナーブランディング活動は、お客様への約束となる定義されたブランド価値を実際の商品やサービス内容のなかで実現することを目的とする。そのため、商品の開発から設計、材料や部品の調達、生産、品質管理、物流、営業、アフターサービスなどすべての部署がインナーブランディング活動の主役となる。

この約束しているブランド価値を実現しようとするブランド意識は、正社員だけでなくパートタイマーや派遣社員など価値を実現のための業務に関わるすべての人が等しく持つ必要があるらしい。

具体的なインナーブランディングの進め方などが解説してあって、なかなか参考になる。

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