組織行動という分野はフレームワークでちょこちょこ考えるのには向いていないのかもしれない。何よりも感情をもって動く生物を対象にするのできまった枠組みでは考えにくいのだろう。
でも『組織の心理学』にはフレームワークが満載だ。
この本は同志社のビジネススクールで田尾教授がテキストとして使っているらしい。事例の少ないコンパクトな理論書だが、組織を官僚制と対極にあるオープンシステムとして捉え、閉じたものではなく開かれたものとして、枠組みでくくるよりも例外や個別性を重視しているように思う。
田尾氏自身が述べているようにこの本はこれまでの理論的集大成として授業用にまとめられているので具体的なケースが一切なく、理論が凝縮して展開されている。読むだけでは少しわかりにくい本ともいえる。
本の中で参加の心理学を組織論に展開したリッカートの連結ピンモデルが紹介されている。部長や課長というのを連結ピンモデルで考えると、上と下の組織に挟まれ、かわいそうに見える管理職も実は情報流通と参加意識のピンとして重要な役割を果たしているのがよくわかる。