2008年に東京大学からオックスフォード大学に移った教育学者によるイギリスの大学をレポートした本。

イギリスから見た日本の大学論についても書かれている。

オックスフォードやケンブリッジというイギリスの大学では、カレッジという共同体があり、そこではチュートリアルというマンツーマンによる教育が行われている。そこで「教育された市民」となるエリート教育が行われている。

イギリスの大学にあって、日本の大学にないのはそのようなチュートリアルという制度だ。オックス・ブッリジは労働者が行く大学ではなくイギリスの階級社会を象徴したような存在であるが、エリート教育を実績によって誇りにしている。

日本の大学改革では○○力の養成ということが言われるが、具体策になると年間で週15回の授業を行うことなど形式的な案にしかならない。その実現にも躊躇する意見もある。

そんな内容が書かれている。

また最近のポリテクの大学化以降の財政難からイギリスの大学の授業料値上げの問題も報告されている。

日本と違うのはイギリスでは学費を卒業後自分で払う制度であること。親が支払う日本の大学制度とはこれも違うことが指摘されている。

筆者が大学の秋入学について、グローバル化のなかで日本の大学にできることを提言している。

それは大学院の修士課程で1年半の課程をつくり、質の良い教育を行い、世界の優秀な人材を吸収することだ。

いま世界のトップクラスの大学では人文系の大学院修士で人材獲得競争が行われているのだそうだ。

日本の大学生の8割が私立大学に学んでおり、私立大学は財政基盤が脆弱なため、学生集めを第一に考えなければ経営が成り立たない。その悪循環で教育の質が悪くなっている。

その指摘も正しいと思う。

ただ、筆者がイギリスでもポリテクから移行した大学から世界を見れば、また大学の世界も違って見えるのではないかと思う。

立つところによって問題意識が異なると思えるからだ。

この本は財政的な余裕があり、学問の最先端でいられるオックスフォード大学からの報告である。

しかし、筆者が日本の中央教育審議会の委員などになればまたこの考えが政策となってしまうのだろう。。