書肆じんたろ

読書は著者との対話、知りたいことのseek & find、ひとときの別世界。 真理には到達できないのに人々はそれを求め続ける。世界が何であるかの認識に近づくだけなのに。正しいことより善いことのほうがいいときもある。大切なのは知への愛なのか、痴への愛なのか。

2015年08月

[図解]一目でわかる! 世界の軍事力
ワールドミリタリー研究会
PHP研究所
2013-04-26


軍事力について全く知らないで議論するより、少しは知っておいたほうがよい。
問われているのは戦争なのか抑止力なのか。
判断能力のないこどもをプラカードがわりにデモにつれていくのは反対だけれど、高校生がデモに参加するのは賛成だ。自分で考える力はもっている。
時の為政者を「ヤメロー!」とけなしてすっきりしたら、ではどういう世界にすればいいのかを自分の頭で考えてほしい。どうして後藤さんはイスラム国に殺されたのか。核の抑止力はどこまで有効でどこから意味がないのか。右翼や左翼というレッテル貼りには意味があるのか。

憲法とは何か (岩波新書)
長谷部 恭男
岩波書店
2006-04-20


集団的自衛権の必要性はひとまず置いておいて、安保法制が違憲か合憲かを考える。
短いフレーズのラップやシュプレヒコールで説明できるものではない。
安保法制を違憲か合憲かと主張するときに、次のことを自分はどう考えるかはっきりさせないといけない。
(1)憲法に明記されていない自衛隊は違憲なのか合憲なのか
(2)国連憲章で保障されている自衛権と日本の憲法の関係をどう考えるか
(3)個別的・集団的を区別していない国連憲章の自衛権を憲法9条でどう解釈するか
(4)どうして1972年の政府見解を変えることが違憲になるのか
(5)集団的自衛権の限定行使は1972年政府見解の範囲内か

賛成派学者の理屈は、自衛隊は合憲、なぜなら国連憲章で自然権として自衛権が保障されているから。
国際法である国連憲章が憲法に優先する。つまり個別的、集団的を区別しない国連憲章で集団的自衛権は行使できる。
それを考慮していない1972年の政府見解は間違っているので、解釈を変えても問題ない。

ただ政府は1972年見解を変えていないし、限定的な集団的自衛権の行使はこれまでの解釈の範囲内だというところが賛成派学者の見解とも違うのでややこしい。

反対派学者の理屈は実際にはいろいろだ。自衛隊を違憲とする者、合憲とする者もいる。主流派は、自衛隊は合憲。国際法で自衛権は保障されているから。
ただ、国際法の権利を実行するかどうかは国の基盤である憲法が優先する。侵略戦争の放棄を定めている日本の憲法では集団的自衛権の行使は認められない。
そのことを1972年の政府見解で定め、長年、立法府、行政府で安定的に運営してきた。今回の法案はその解釈を変える内容であり解釈改憲である。解釈改憲を時の内閣の判断で行うことは立憲主義に反するのでできない。または改憲手続きが必要。  
○反対派:長谷部恭男(自衛隊合憲論)、小林節(自衛隊違憲論)  
○賛成派:西修、百地章 

この本で日本の軍事のあり方、抑止力、周辺諸国との歴史認識問題などの疑問が氷解した。
著者は自衛隊に入庁し、防衛庁の中枢でイラク派遣にも関わっている。イラクで誰も殺さなかったことを誇りに思っている。イラクで自衛隊の犠牲者を出す覚悟はなかったとも書いている。ひ弱な防衛庁幹部ともいえる。
戦わずして勝つ。本当の意味がわかったように思う。
防衛庁OBでも尊敬できる人はいるんだ。本当は自衛隊や軍隊の隊員が尊敬される、そんな国にしないといけない。70年間戦争をしなかった日本はそんな国になる資格がある。そう思った。

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