ブックカバーチャレンジ3冊目は、コリン・パウエル『リーダーを目指す人の心得』(飛鳥新社)。
河合隼雄『こころの処方箋』がカウンセリングルームでヒソヒソ話す相談事だとすると、この本は戦場や軍隊というシビアな場所での教訓話。なのになぜか似ている気がする。たぶんギリギリのところでふっと励まされる感覚があるところかな。
湾岸戦争の時、統合参謀本部議長として「砂漠の嵐」作戦を指揮して、その凜々しい姿で国民的英雄になり、一躍有名になった。その後、ブッシュJr.政権の国務長官を務めた。
よく読み返す章がある。
「指揮官は戦場のどこにいるべきか」
指揮官が先頭にいれば、隊を鼓舞できるが、その瞬間、生き延びようとあがくひとりの歩兵に過ぎない。部隊全体をみることもできないし、部隊を適切に動かすことも出来ない。
砂漠の嵐作戦の時、軍のトップのパウエルはペンタゴンにいた。思ったより戦闘が長引いて世論が動揺し始めた。そこでペンタゴンで記者会見を開き「まず孤立させ、続いてとどめを刺します」と述べた。国民感情が一転した。指揮官は戦場のどこにいるべきかの問いの正解は、自分の存否が成否を分けるところとか。その見極めが難しい。
「着任30日が過ぎれば、言い訳はできない」
着任30日過ぎれば、もう自分の責任だという教訓。着任後、不満があったら、最初は前任者のせいにしていい。次には軍隊を再編する。30日過ぎても不満を言う者は去るべきということ。
「消せない過ちーーイラクの大量破壊兵器についての誤解」
パウエルにとって消せない過ちとは、CIAの調査報告を信じ、アメリカの代表としてイラクの大量破壊兵器に関する演説を国連で行って、その後イラク戦争が始まったこと。CIA報告は嘘だった。多くの命が失われた。
パウエルは、そのことを自分の経歴の汚点だと認めている。
その後、コリン・パウエルは大統領選挙に共和党から出馬を要請されたが、辞退した。