イスラム研究者の内藤正典教授と日本人イスラム教徒の中田考氏の対談。
この二人は2012年に同志社大学でアフガニスタンの関係者を呼んで会議を行っている。
集まったのはタリバン政権時代のパキスタン大使、カルザイ政権の国防相、反政府組織の代表。
それで講和について話し合ったとか。
なんでそんなことができるのか?
それは、中田氏がイスラム世界に通じていて、日本とイスラム世界との通訳のような役割を果たしているからだろう。
この本を読むと、アフガニスタンの問題、タリバンの成立、ISがどうやってできたかもよくわかる。
世界、とくにヨーロッパでモスリム排斥運動が起きる背景、グローバル資本主義の浸透とグローバルジハードが続く意味もわかる。
イスラム教は一神教だと言われるが、統治においてもイスラム法によってカリフがその地域を治める。異教徒を追い出すことがジハードなので、サウジアラビアに米軍が駐留することも排撃対象だし、アフガニスタンの米軍も同じという理屈なのだ。タリバンが勢力を盛り返したのもわかる。
この本を読んでいるとそういうことがわかるので、いつのまにか「あっち」の論理になってしまう。
モスリム的発想になれば、西欧型の自由、平等、人権、民主主義などの普遍主義がいかに一地域の価値観を別の地域に押しつけているのか疑問になる。
トルコのエルドアンは西欧化の先鋒だと思っていたが、実はイスラム法に通じた賢人だという評価も意外だ。カリフになれる人物だったとか。
この本はいろんな常識を覆す。
排除の論理で進めるのは終わりのない戦いになる。
講和について考えさせられる。