書肆じんたろ

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カテゴリ: マーケティング

クッキー規制を乗り越える! 新しいデジタルマーケティングの本
野村総合研究所 広瀬安彦
技術評論社
2023-12-23




Z世代とは、1996年頃~2010年頃までに生まれた世代のことらしい。
つまり今10~20歳代の人たちだ。
スマホネイティブ、デジタルネイティブ、SNSネイティブ、タイパ重視、自分の価値観を重視した消費行動、社会問題に高い関心を持つという特徴があるとか。
Z世代の区分は、2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロを知らないということ。この事件を覚えている人と覚えていない人では消費行動が違うという考えらしい。
でもまあ、この事件が与えた影響というより、この事件を知っている世代と知らない世代で区別すると消費行動がわかりやすいということだろう。
日本とアメリカのZ世代の違いは、アメリカでは、Black Lives Matter運動とか政治や社会の問題に疑問や不満を持つようになったのに対して、日本ではそんな変化は起きなかったとか。それは少子高齢化が原因と考えられている。

この本には、Z世代は広告が嫌い、ブランドや知名度を重視しない、ロールモデルは実現可能性の高い人(松田聖子・安室奈美恵より登録者10万人のYouTuberでメイク動画をアップしている知人とか)などZ世代の特徴が書かれている。
一方で、Z世代にひとつだけの正解はないとか、性別で一括りにできないとか特徴があるようでないとも思える。

ショート動画、TikTokがタイパで効果があるということだけはわかる。
でもそれは今やZ世代に限らないだろう。





「たったひとつの」と書かれているので読んでみたが、たったひとつというのは「マーケティング思考」ということ。
それを理解するために、基本的なフレームワークとかP&GとUSJのエピソードとかがふんだんに詰め込まれている。「たったひとつの」と謳っている割りに「たったひとつ」じゃないんじゃないか?
しかし、読んでみて思うのは、もっとも大事なのは「消費者志向」ってことなのだろう。

マーケティングの本質とは何か?

①消費者の頭の中を制する
②店頭(買う場所)を制する
③商品の使用体験を制する

という3つの消費者との接点でどれが一番重要かと森岡氏は問う。

で、その答えは、①消費者の頭の中を制すること、だという答え。
消費者の頭の中を制することは、店頭を制することにも商品の使用体験を制することにもつながるから。
頭の中を制するのに大事なのは、認知率(Awareness)とブランド・エクイティー(Brand Equity)。
店頭を制するのに重要なのは、配荷率(Distribution)、山積(Display)、価格(Pricing)。
商品の使用体験を制するのは、トライアル(Trial)とリピート(Repeat)、つまり購入頻度を増やすこと。

市場分析のフレームとしてよく3C分析が紹介されるが、森岡氏は5C分析を紹介している。

Company(自社の理解)
Consumer(消費者の理解)
Costomer(流通などの中間顧客の理解)
Competitor(競合する他者の理解)
Comminity(ビジネスをとりまく地域社会の理解)

限られた施設のなかで設備投資をどうするかを考えるテーマパークの市場分析をする上ではこのフレーム、この順序が適しているのかもしれない。
通常は、Costermerで市場のニーズを分析し、次にCompetitorとして競合を分析し、Companyとして自社の資源をどう対応させるかを考えるんじゃないかと思うが。

ConsumaerとCostomerを分けるのは、P&Gなど中間流通業者がカギを握る場合には有効なのだろう。
そして、森岡氏はConsumerを「マーケターの神髄とも言うべき課題」としている。
消費者の量的理解、質的理解、深層心理に迫ることこそ重要だと。

本題とは関係ないが、どうして森岡氏が新会社を「株式会社刀」と名付けたのか疑問だった。
実は森岡氏の趣味が日本刀らしい。

「私が日本刀を見て深く感動するのは、人を斬るという合理的な目的を徹底的に追求しながら、合理性を超越した「何か」を強くかじるからです。・・・日本刀は、合理性を突き抜けて美に昇華した鉄の芸術です」

これが森岡氏のマーケティング道だという気がする。

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