書肆じんたろ

読書は著者との対話、知りたいことのseek & find、ひとときの別世界。 真理には到達できないのに人々はそれを求め続ける。世界が何であるかの認識に近づくだけなのに。正しいことより善いことのほうがいいときもある。大切なのは知への愛なのか、痴への愛なのか。

カテゴリ: 法務





タイトルが面白そうだったので買って読んでみたが、弁護士が書いた本だけあって、徹底した守りの策を提示している。
著者の問題意識は、日本の企業は総時価ランキングでも20位以内に一社も入らない。オリンパス、東芝、三菱自動車など不祥事は収まらない。それは監視監督の機能が働いていないからということ。
そのために、社外取締役や監査機能の強化を唱える。
内部監査や法的チェックなど徹底的にリスクを洗い出し、低減させること。などなど。
私立学校についても最後に少し書かれている。
外部から理事を招けば、統廃合などの撤退事業が進むだろうとか。
「学校法人などのように公益性が高く、社会的責任が大きい組織はどうしても現状維持の空気が強くなり、変革のための議論がしにくくなる傾向があるかもしれません」
これは電力会社やガス会社なども同じかもしれない。
弁護士がこういうタイトルで書くとこういう内容の本になるだろうという本だった。



 法律実務のツボが理解できない部下に、どんな本を読んだらいいですか、と尋ねられた。
 テーマが民法の債権債務にかかわることだったので、内田貴『民法Ⅱ・債権各論』を勧めた。でも、まあ、教育学部を出て、旅行代理店に勤めていた部下にはちょっと難しいだろう。それで、内田貴さんの入門書を探したが適当なのがない。民法改正の解説本がど~んと出版されているが、そもそもツボを押さえる本がない。
 そんななかでamazonで目次を見てよかったのがこの本。読んでもいないのに部下に勧めた。同時にamazonで古本を注文した。読む速さが違うようで、私のほうが先に読み終えた。ツボってのは必要な所に早く到達すること、要らない所は飛ばしてこだわらないってこともあると思った。でもそれは、私が2年間司法試験の勉強をして、それも200万円くらい通信講座とかにお金を費やしたからわかることなんだろう。
 法律の勉強にはやっぱり王道はないのかもしれない。地道に本を読んだり、問題集を解いたり、論述をしたりすることが必要なのだろう。自分で考えること、それが大事。概念を覚えて、それで遊んでいるレベルでは法律実務を間違う。法学部出身者にそういう人が多いように思う。
 そして、実際の実務で弁護士、それも多くの弁護士といっしょに仕事をすることが大切な経験になるだろう。そうすれば、弁護士資格をもっているだけの弁護士から、一瞬でツボに到達することのできる弁護士まで世の中にはいろいろ存在することがわかる。どうすればそういう弁護士に出会えて、どういう質問をすればよいかは、こつこつと法律の基礎知識を蓄えて、実践で案件と真剣に向かい合うことしかない。
 この本のよいところは、4章までで民法の基礎知識を押さえて、後の章で事例に基づいて考えることが出来るというところだろう。事例もよく考えられていて、私もこの本で使用者責任と求償のことを、判例に基づいておさらいできた。
 でも、これはあくまで入門書。わからなければ繰り返し読む所から始めるべきだろう。そして、内田貴『民法』のような司法試験受験者や弁護士が実務で使っている本に進めば良い。内田さんは債権債務を図で表現することにも長けていると思う。部下には、ぜひ、そこまで進んでほしい。



お客様は神様、クレームは改善のための宝として接することがよいことだといわれる。

一般的にはそうであるが、そうでない場合もある。

「悪質クレーマー」と呼ばれる人々との対応だ。

「お客様は神様、クレームは宝」を貫くと顧客が消費者より常に強い関係になる。

悪質クレーマーはこの関係を利用するのだ。

この本によると、悪質クレーマーが増えたのはは2000年代に入ってからだという。

その要因は、消費者保護法の施行によって、消費者意識が高まったこと、企業の不祥事がマスコミで大々的に報道されて、消費者が企業にものを言いやすくなったこと、消費者がインターネットで企業の対応のまずさなどをすぐに広められるようになったことが背景にあるようだ。



この本には、顧客と悪質クレーマーの見分け方が書かれている。

悪質クレーマーを見分けるポイントは5点。

(1)欠陥・瑕疵ないし過失の存否

(2)損害の存否

(3)欠陥・瑕疵ないし過失と損害の相当因果関係

(4)損害と要求の関連性

(5)クレーマーの行為態様



製品の不具合などについて顧客がクレームをいうのは当然だが、苦情・クレームに名を借りて、執拗に不当な要求や嫌がらせを繰り返すとか、事実根拠がおかしかったり、どうみても法的に不当なことを要求してくると悪質クレーマーとしての対応が必要になる。

著者は悪質クレーマーについて、4つに分類して対処法を解説している。



性格的問題クレーマー

精神的問題クレーマー

常習的悪質クレーマー

反社会的悪質クレーマー



特に問題なのが、性格的問題クレーマーかと思う。

性格的問題クレーマーの目的は、極端に強い自尊心から自己中心的な欲求を満たすためにクレームで相手がひれ伏すまで行動を続ける。

お金が最終的な目的ではないので、理不尽さに窓口対応担当者などが疲弊したり、精神的に病んだりしてしまうこともある。

しかし、会社が間違った対応をしたために、普通の顧客のクレームから悪質クレーマーに変えてしまうこともあるので要注意とか。



法律改正や権利意識によりクレーマーが増えたということもあるが、ストレスなどにより精神的に病んでいる人が多くなったことも要因のような気がする。


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